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禁断の果実に口づけを
第32章 記憶の欠片
「お前の無くしたピースは歪な形だったかもよ?
知らないでそのまんま生まれ変わるのもいいと思った。
だけど、知らないまんまだとまた過ちを犯す。
伊織にお前を紹介された時、『伸ちゃんみたいな人』って言われた。
初めてお前が俺の働く工場に来た時、『あぁ……全くその通りだ』って苦笑した。
悪戯で車をパンクさせられたのがきっかけ。
あの時の洋子は目を釣り上げた醜い顔していた。
そうなる気持ちも分かる。
不器用だからこいつは嫌われたんだって。
それでも、段々可愛げも出てきて、いい女になっていった。
今の洋子の顔、剣がなくて穏やかだ。
うっとりするくらい綺麗になった」
「えっ、あっ、あ……そうなんですね。
私、散々酷い事して嫌われていた様ですね。
それも何となく分かる気がします。
川端さんに対しても……」
自分には記憶のない男だが、自分をよく知っている男。
でも、一言一言語られる度、照れてしまう。
「どうかな?
でも、俺の前では可愛かったよ」
「あなたと私はどんな関係だったの?」
「ギブス取れたら、デートでもするか?」
「えっ?」
「気持ちまで記憶から抹殺したなら……
ここで終わり」
「えっ?それはどういう事なんですか!?」
「寒くなってきたから病室に戻れ!
本日の見舞い終了」