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禁断の果実に口づけを
第32章 記憶の欠片

 一階の売店まで車椅子を押す伸介。

 「ちょっと待ってろ」
と声を掛けて、売店に入る。
出て来ると、ラッピングされたピンクの袋を洋子に差し出した。



 「えっ?」

 「少し早めだけど、ホワイトデー」

 「えっ!?」

 「バレンタインのお礼だ。
それと、お土産美味かったぞ!
白飯に合うよな」

 「あのぉ……」

 「お前が忘れても、お返しはするさ!」

 「…………私があなたに?」

 「大きな病院の売店は品揃え豊富で助かる。
美味いものご馳走して貰って、お返しもしない男はセコイだろ?」

 「あっ、はぁ……なら遠慮なく頂きます。
有難う御座います!」

 「無理に思い出そうとすんな!
それと、思い出しついでにREDな夜なんて試すなよ?
ギブスいつまでも取れねーぞ!」

 「えっ?え?何の事かしら?」

 「じゃあな!」


 そう笑って背を向けた。
背が高くて、ガサツイケメンなお兄さん。
こんな人と恋愛?
ないない!
どう見ても、私より年下。
有り得ない!
でも、あの声が心地良く、キュンとしてしまうのは何故?
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