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禁断の果実に口づけを
第33章 ピース
「娘がこの病院で看護師してるんですよ。
夜勤なんで、さっき送ってきたとこです。
あと……先月この病院で主人を亡くしたんです。
もう末期のガンでしたからね。
手の施しようがなかったんです」
「あら、まぁ…それは御愁傷様です………」
「でも、ゆっくりお別れ出来ました。
あなたのお陰ですよ。秋山代理」
「えっ!?私の?」
「記憶にないなら、しらばっくれたいとこだけど……
ちゃんと謝れてなかったんで。
秋山代理の車を故意にパンクさせてしまいました。
言訳にもなりませんが、仕事のストレスや主人の病気の事で八方塞がりになっていて……
つい出来心で本当に申し訳ありませんでした!!」
「あの………私って、そんなに嫌な人間だったんですかね?」
「あっ、あ、いえ……代理。
その事があってから久々に代理をお見かけして、ちゃんと謝れてなかったのも、私の中で引っ掛かってまして……
ずっと、代理にちゃんと謝りたかったんです。
代理が記憶を無くしているからって、都合良くしらばっくれる狡い人間にはなりたくなかったので、どうかお許し下さい」
「あっ、あの……頭を上げて下さい」
「私はあなたに助けて頂きました。
本当のあなたの姿は器の大きな女性ですよ」
「あっ、それなら少し気が楽になります。
多分、目を背けたくなるほど酷い事もしたけど、良い事もしていたんですよね?」
「はい。
私は秋山代理にとても感謝しています」
「……感謝ですか?」