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禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実
記憶を取り戻した洋子は、現実をしっかり見据えようと思った。
過去があるから今がある。
自分が作り上げてきた過去は、未来にどう生きるかにより変わる。
仕事も恋も自分も。
✾✾✾
愛しい伸介に会えたのは、桜の季節を通り越し、緑生い茂る初夏を迎えていた。
やっと会えた喜びを噛み締め、車の助手席でドキドキする。
ハンドルを握る伸介。
洋子のマンションの前まで愛車の赤いポルシェで迎えに来た。
『さすが片岡モータースの御曹司ね……。
私の知っている伸介は、工場で油まれになって仕事をしていた。
いつもあなたの言葉に戸惑いながらも、傷つき、憤慨しながらも納得させられていったわ。
あなたの言葉は私に届き、頑な心を容赦なく破壊していった。
私は、目に見えるものでしか判断しない狭い視野しか持ててなかったからね。
過去があるから、その事にも気づけたよ……』
「少し痩せたか?
それに随分大人しいな。
しおらしく見えるぞ、洋子」
「そう?
とっておきの一日にしたいじゃない」
「だよな」