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禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実


 一口蕎麦をすすると、口中に広がる蕎麦の薫り。
ツルツルとした食感。
噛めばコシのある歯応え。
もう一口、もう一口と手を伸ばしたくなり、止まらなくなりそうな程の食欲をそそる。
また汁の味も蕎麦とマッチし、『満足』の二文字を口の中に訴えてくる。

 互いに顔を見合わせ、「蕎麦、最高!」「うん、最高に美味しい!」と舌鼓を鳴らして笑顔になった。


 「たまにはこんな休日もいいな」

 「忙しいの?」

 「あぁ。
四月に本社に帰ってからはな。
修理工しながら修行している時の方が俺らしかったかもな」

 「でも、それが伸介の運命なんでしょ?」

 「そっ!
変わらない運命」

 「私も運命って不思議だって思うのよ。
たった一ヶ月くらいの記憶喪失だったけど、起きたら世界が変わっていた。
浦島太郎の気持ちがよく分かるわ」


 『プゥ』と伸介は吹き出して、『浦島太郎!?』と聞き返した。
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