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禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実
「ーーうん。
現実は変わらない。
それでも、過去を自分がどう生きたかで未来も変わってくる。
そんな当たり前の事に気づけなかった。
だからこそ、ゆっくり解かれていった気がするわ。
ギュウギュウに締め付けられてこんがらがっていた糸が、緩みを与えられながら、左右に引っ張られてさ……
繋がる場所が切れないように辿らせられたみたいよ。
その糸の向こう側に伸介が居た。
ーーなんてね!格好つけた台詞すら、スラスラ口から出ちゃうわ」
「いいんじゃね?
今の洋子だから言える台詞だろ」
「記憶、戻って良かった」
「だな。自分の生きてきた過去が一部が分からなくなるのは不安なんだろうな。
その時の自分まで消えちゃうようでさ……」
「呼び戻されたよ。
大事な想いに」
「洋子……」
返事の代わりに私は笑った。
「美味いな、蕎麦。
ゆっくりしたいな。酒でも飲んで……」
「運転は変われないわ。高級車だし、万が一を考えると怖いもん」
「じゃあ、早く宿に行こう」
「うん……」
気持ちもあの頃と一緒よ。
あなたに疼いてしまう。
あなたの仕掛けるセックスも大好き。
何一つ変わってないの。