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禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実
あれから十分ほど山道を走っただろうか……
伸介は今夜泊まる宿の駐車場に車を停める。
川のせせらぎが耳に届いた。
車を降り、山々の緑に囲まれた景色の中、全身にマイナスイオンを注ぎ込まれているような清々しい気持ちになる。
番頭らしき男が近づいてきて、私達に挨拶をした。
「少し早かったかな?」
伸介が男に挨拶した。
「部屋の用意は出来てますので構いませんよ。チェックインしましたら、お部屋の方で寛いで下さい」と柔らかい笑顔で対応する。
番頭さんは私のボストンバッグを持ってくれて、宿の方に案内してくれた。
フロントで宿帳に伸介が名前を記入する。
東京都港区白銀台……………スカイポートマンション1052号室
あのレトロなアパートの伸介は仮の姿なんだな……
本当の伸介は、人が羨む場所のマンションに住み、片岡モータースという一部上場企業の御曹司であり、いずれはその会社を背負っていく男なんだもんね。
これが本当の片岡伸介
私には不釣り合い。
分かっているわ。
そんな事、最初から………
だけど、あなたの名前の横に洋子と書いてくれたのは、私に掛けてくれた何気ない優しさだよね。
そういうの嬉しいね。