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禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実


 仲居さんに部屋へと案内されると、早速伸介は冷蔵庫からビールを取り出して飲んだ。

 「生き返る!!」

 そう叫びながら、美味しそうにゴクゴクと喉を鳴らす。

 「運転ご苦労様」

 「あぁ、洋子も飲みたかったら飲めよ!」

 「えぇ……」

 「なんなら、今のうちに浴衣選んできていいぞ」

 「えっ!?」

 「蛍見に行きたいんだろ?」

 「えっ、あ、でも………」

 「少し飲んで、休んで、風呂入って、飯食ってから蛍な!」

 「うん!」


 蛍を見るなんて……
伸介と蛍を見に行くなんて……
夢みたいだよ。
こんなシチュエーションいいの?
幸せだよ。

とっても。



 洋子はウキウキしながら、フロントを訪ねて浴衣を見せて貰いたいとお願いした。
女将さんが出てきて、浴衣のある部屋へと案内して貰う。
浴衣が置いてある部屋は、ちょっとした貸衣装屋さんの店先みたいな造りになっていて、外にある庭園の池からは獅子脅しの音が鳴り響き、和風旅館の情緒が心地よく、気持ちが和ませた。

 「お客様、お着物似合いそうだわ」

 女将は洋子を見てニッコリ笑う。
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