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禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実
一番最初に目についたのは、紺地に淡い水色やピンクの紫陽花柄の浴衣。
落ち着いた感じの素敵な浴衣に一瞬で心を奪われてしまう。
女将はそれに気づき、その浴衣を洋子に見せた。
「お客様に似合うと思いますよ」
「この浴衣一目惚れです」
「着てみますか?」
「いいんですか?」
「はい」
女将は洋子に浴衣を着付ける。
「お客様は、紫陽花の花言葉はご存知ですか?」
「いえ」
「元気な女性という意味と辛抱強い愛情っていう意味があるそうです。
鎖国時代の長崎に来日したドイツ人医師シーボルトが国外追放となった時、紫陽花を祖国に持ち帰りオタクサと命名したそうです。
その名前には、国外追放をされたシーボルトが、彼が愛した日本人女性のお滝さんを想ってつけたものと言われてます。
二度と会えない、忘れられない女性を想う気持ちが紫陽花の花に例えられたなんて、ロマンチックですよね!」
「えぇ……」
「赤い帯結びましょう。
お客様のイメージにぴったり」
着付けが終わり、姿見の前に立つ洋子。
「綺麗やわ!」
「女将さん、関西の方ですか?」
「あっ、分かります?
咄嗟に出てしまうんやわ…」
はにかんだ笑顔を見せる女将。