この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実
『ふぁ』と間抜けな欠伸をして伸介が起きたのは夕方だった。
「あぁ……グッスリいっちまったか。
退屈させたな。洋子」
「いいよ。疲れてるんだから。
それに最初に……
あっ、あの日も寝ちゃったじゃない」
「最初に洋子とヤッた日?」
「下品ね」
「悔しかったか?」
伸介はイタズラな笑顔で洋子を試す様に言った。
「うん。凄く!!
でも、背を向けられて気づく事もあるよ」
「お前、変わったな。
似合うよ。浴衣。
なで肩だから余計な。
女の身体って感じ」
そう言って洋子を抱きしめて起き上がる。
「夕飯食ったら、蛍見に行かないとな」
「うん」
『あなたの身体の体温が私をドキっとさせる』
✾✾✾
暫くして、仲居さんが部屋に夕食を運んできた。
刺し身の舟盛り、山菜の天ぷら、和牛のステーキ、煮物、湯葉の和え物、汁物などが綺麗な盛り付けで運ばれて来て、目を喜ばせてくれた。
その土地の冷酒を頼み、伸介にお酌して、冷酒を呑みながら夕食の時間を楽しんだ。
「たまにはこんな懐石料理もいいんじゃね?」
「うん。贅沢だね」
「たまには自分にご褒美するんだと。
みんな毎日必死に生きてるんだからな、だからこそ可愛がってやんないと自分が死んじまう。
必死って言葉は怖いな。
必ず死ぬって書きやがる。
だけど、考えた奴はそんな思いを込めたんだろうよ?」
「かもね」
「死なない程度に息抜けよ。洋子」
「そうね。死んだら終わりだもん」