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禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実

 『ふぁ』と間抜けな欠伸をして伸介が起きたのは夕方だった。

 「あぁ……グッスリいっちまったか。
退屈させたな。洋子」

 「いいよ。疲れてるんだから。
それに最初に……
あっ、あの日も寝ちゃったじゃない」

 「最初に洋子とヤッた日?」

 「下品ね」

 「悔しかったか?」

 伸介はイタズラな笑顔で洋子を試す様に言った。

 「うん。凄く!!
でも、背を向けられて気づく事もあるよ」

 「お前、変わったな。
似合うよ。浴衣。
なで肩だから余計な。
女の身体って感じ」

 そう言って洋子を抱きしめて起き上がる。

 「夕飯食ったら、蛍見に行かないとな」

 「うん」


 『あなたの身体の体温が私をドキっとさせる』


✾✾✾

 暫くして、仲居さんが部屋に夕食を運んできた。
刺し身の舟盛り、山菜の天ぷら、和牛のステーキ、煮物、湯葉の和え物、汁物などが綺麗な盛り付けで運ばれて来て、目を喜ばせてくれた。
その土地の冷酒を頼み、伸介にお酌して、冷酒を呑みながら夕食の時間を楽しんだ。


 「たまにはこんな懐石料理もいいんじゃね?」

 「うん。贅沢だね」

 「たまには自分にご褒美するんだと。
みんな毎日必死に生きてるんだからな、だからこそ可愛がってやんないと自分が死んじまう。
必死って言葉は怖いな。
必ず死ぬって書きやがる。
だけど、考えた奴はそんな思いを込めたんだろうよ?」


 「かもね」

 「死なない程度に息抜けよ。洋子」

 「そうね。死んだら終わりだもん」

 
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