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禁断の果実に口づけを
第35章 禁断の果実


 ほろ酔い気分になりながら、夕飯を堪能し、あなたも宿の浴衣に着替えて外に出た。
下駄を借りて、二人並んで河原を歩いた。
下駄の音がカタカタと夜道に心地良く響く。


 蛍を探したね。
心地良い夜風が吹いて、夏の薫りを運んでいた。
河原に舞う蛍は幻想的で、短い命の限りを知るかの様に光を放つ。
儚げでありながら、その姿は綺麗で見る者の目に焼きつけていった。


 私はあなたの横顔を見た。
いつもは鋭いあなたの瞳にも優しい光がともる。


 「洋子……
蛍みたいな女になれよ。
健気で可愛い女のまんまで居てくれ」


 「伸介……」

 「綺麗だな。
蛍」

 「そうね」

 「お前と見れて良かった」

 「……うん」


 私達は立ち尽くす様に蛍の舞を暫く無言でみていた。

 この景色を………
生涯忘れない。
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