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禁断の果実に口づけを
第6章 洋子の変貌

 いつもと変わらない朝に過ぎないのに、洋子にとっては特別な朝だった。

 営業所に出勤する。

 洋子の顔を見れば、「お早う御座います」の当たり前の挨拶が返ってくる。

 昨日、洋子を助けようともしなかった輩も平気な顔をして、
『昨日は大変だったみたいですね』とわざわざ知らない振りをして同情してくる奴も居た。

 平然とした顔を作る洋子。



 警察沙汰にはしないであげるわよ!
誰がタイヤに細工したのか?
分からないまんまも悔しいけど、その悪戯に至る経緯を話されたら、私自身の評価も下がるかもしれない。

 イヤな上司と陰口を叩かれていても、仕事仲間を売る事だけは辞ようと思った。

 席に座ると洋子は川端伊織を呼びつけた。

 一瞬、ピクッと背中が動く川端。
綺麗に化粧をして、可愛らしいスーツを着こなしている。

 いつも、川端のつけてる口紅の色も気にくわない。
色白の彼女が赤みのあるグロスをつけると、白雪姫の様なイメージになる。

 毒リンゴを渡したくなってしまう程、苛めたくなる気持ちを抑えた。

 「きっ、昨日は有難う御座いました。
お陰で助かりました」

 この子にお礼を言わなきゃいけないなんてね‥‥
慣れない事すると声も上ずるわ。


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