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禁断の果実に口づけを
第36章 恋が教えてくれたこと


 「このまんま真っ直ぐ帰るけど、最期に寄り道していこう」

 そう言って、高速に乗り都内まで走らせる。
なかなか涙が止まらない私に声を掛ける事なく、伸介は車を走らせた、

 都内に入り、サヨナラの時間が近づくと胸が痛くなる。
時間というのは、待ってはくれないものだと、過ぎ行く時の無情さを恨めしく思った。

 高速を降りて、伸介が車を停めた場所は老舗デパート。

 「付き合えよ」

 「その前にトイレ。化粧直すから」

 「そっか」
 
 最期は綺麗に笑う女を作らせて。
車を降りてトイレに寄り、化粧を直して笑顔を作る。
暗い顔はクライマックスには似合わない。

 トイレから戻ると、伸介が先を歩き、連れて行かれたのは呉服店だった。
綺麗な浴衣が店頭に並んでいた。

 「好きな柄買えよ。
似合っていたからプレゼントしてやる」

 「でも……」

 「遠慮すんな。
もう一度、お前の浴衣姿が見たいんだよ。
最期の我儘くらい聞いてくれてもいいだろ?」 



 あなたがそんな風に言ってくれるなら、最期の優しさに甘えるよ。

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