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禁断の果実に口づけを
第36章 恋が教えてくれたこと
黒字の生地に月に向かって兎が走る。
昨日の夜が蘇ってきた。
月が恋しい兎はどこまでも月を追い掛けても届かない。
まるで私と伸介の恋を描いたように……
ただ寂しいだけじゃない。
それに代わる大事なものを与えてくれた恋だった。
「帯は何色にしましょうか?」
「赤い色で」
運命の赤い糸で括れないのなら、せめてギュッと帯で締めて、この恋を彩ろう。
着付けて貰って、伸介の前に行くと………
「夏ぽくていいな。
その柄もお前に似合う」
と真顔で褒めてくれた。
「……有難う」
頬を赤らめて照れてしまう私が鏡に映る。
その横で満足気なあなたの顔も映りこんだ。
あなたの後ろを歩く私はカタカタと下駄の音を鳴らし、真っ直ぐ前を見た。
私はシアワセなんだよ。