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禁断の果実に口づけを
第36章 恋が教えてくれたこと
「腹減ったな」
優しく微笑みながら、あなたが私をエスコートして連れて行ってくれたお店は、目の前でシェフがお肉を焼いてくれる高級ステーキ店だった。
「たまには洋子と洒落た店もいいんじゃね?」
「……有難う」
最期は何から何まで格好つけるのね。
車だからお酒を飲めないあなたは、ジンジャエールを飲みながら、モリモリと焼けたお肉を頬張っている。
そういうとこは男だね。
あなたが居なくなってしまう世界を想像したら、胸が締め付けられてお肉が入っていかないよ。
堪えている涙が出ちゃいそう。
それでも……
「美味しい!」
笑わなきゃ!!
夢のようなひと時が終われば、もうあなたに会えなくなるんだから………
泣くな!私!え・が・お!!
「美味いだろ。
美味いもん食べてる時は笑えよ、洋子。
哀しい顔すんな。
どんなに辛い事があっても腹は減るんだよ。
美味いもん食べると、生きていて良かったって思うだろ?
そういう単純さを持ち合わせてないと潰れちまうぞ」
プルプルと下唇が震えて、涙の雫が落ちそうになるのを堪え、口の中にステーキを放り込んみ、強がりの笑顔を見せた。