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禁断の果実に口づけを
第36章 恋が教えてくれたこと
本来なら、いつ終わりが来てもおかしくない私達だった。
引き際の覚悟は出来ていた。
それが今日だっただけ。
渡そう渡そうと思っていたものをボストンバッグから取り出した。
「はい」
「何だよ、これ?」
「……伸介は口は悪いし、ガサツなとこあるけど、でも、優しくて、私みたいな捻くれ者を導いてくれた魅力的な人よ。
苦しくて辛くてもがいた時もあったけど、その分、自分を見つめ直す事も出来た。
あなたみたいな人が作る会社は、絶対飛躍する!!
だって、ほら、私、年甲斐もなくあなたを好きになってしまったでしょ。
最初から実らない恋だって分かっていた。
それでも、あなたを好きになっていく気持ちは止まらなかった。
でもね、後悔なんて微塵もしてないよ。
むしろ、そんな恋が出来た自分が大好きよ。
こんな気持ちにさせてくれたあなたはもっと大好きよ。
だから、最期はあなたを困らせない。
駄々を捏ねて惨めな女にならないうちにサヨナラしなきゃね!
私からの感謝の気持ちして受け取って欲しい」
伸介は頷き、洋子からのプレゼントを受け取った。
そして、綺麗にラッピングされた包みを開けてみた。
中には紳士ものの腕時計が入っていた。
「あっ、有難う。
でも、ちょっと高価過ぎねーか?」
「うぅぅん。
気持ちを形にしただけよ。
何がいいか選んでいる時、凄く楽しかったわ。
伸介に似合いそうなもの探すの、本当に楽しかったよ」
『あなたは見栄張りなとこあるでしょ。
今回の旅行もあなたが殆ど出してくれたじゃない。
年下なのに徹底したレディーファーストが嬉しいの。
そういうとこ分かっていたよ』
「大切にするよ」
『これからは、あなたの想い描く未来を刻んで下さい』
「私もあなたから貰ったものは全部大切にする。
本当に有難う。伸介」
「洋子も有難うな」