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禁断の果実に口づけを
第37章 生きていかなきゃ
 
 私には部長補佐という名ばかりの役職が与えられてが、他の社員達も、私と同じ様に新卒で保険会社に就職して、約一年に及ぶ研修を経て、みっちりこの仕事の在り方を学んできている。
いわば、この仕事以外他を知らない人達の集まりでもあった。

 敢えて新人を教育するという業務もなく、個々で与えられた顧客管理やセミナーなどを開き、新規開拓などをして成績に残す事が主な仕事となった。
毎月の成績確保というノルマはあるものの、自分で計画を立てながら熟してゆく。
「自分次第で仕事の行方が決まる]というプレッシャーは付き纏うが、上手く行った時の充実感や喜びを格別なものとなった。
それが本来の営業の姿。

 その営業畑に帰ってきただけだ。

 これを左遷と言われてしまえば、身も蓋もない話だが、その方が私には合っていた。

 一から畑を耕し、種を植えてゆく。
水を撒き、声を掛け、どんな花を咲かせるか、どんな実となるのかを楽しみにしながら育てる。
そこに苦を感じなかった。
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