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禁断の果実に口づけを
第37章 生きていかなきゃ
此処に来る前、洋子の事は、噂話や憶測などを含め、かなり酷い女という話で伝わっていたみたいだ。
『仕事に厳しく、気にいらない者が居ると苛め抜き、辞めるまでとことんいたぶる女』と。
確かに一理あり。
半分以上が本当の話。
『秋山さんに睨まれたらどうしょうって、本当はビクビクしてましたー』
とあっけらかんと明るく言うのは、まだまだ二十代前半の中村小雪(なかむらこゆき)
彼女を見ていると、何となく川端伊織を思い出した。
語尾が上がる話し方は、若さであり、仕方ないものだと自分に言い聞かせた。
そんな事でいちいち目くじらを立てていたら、皺が増える一方だし。
お弁当を食べながら、携帯アプリゲームやLINEに夢中な東山哲也(ひがしやまてつや)は、今年三十歳になったばかり。
たまに仕事の時も上の空で生返事な事もあるが、放っておいても仕事はきっちりやるタイプなので、そういう性質なんだと思えば腹も立たない。
木暮隆史(こぐれたかし)は、アイドル好きでコンサートやグッズに給料をつぎ込んでいるオタク系独身男。
洋子とあまり歳は変わらない。
洋子の噂話にビビりながらも、何かと親切に接してくれた。
人を外見で判断してはダメだという事は学習済み。
そういうの考慮して、差し障りなくやってゆけば問題も起こらない。
心機一転、仕事に励む環境に適した場所でもあった。