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禁断の果実に口づけを
第37章 生きていかなきゃ

 自分が特別変わった訳でもない。
そういう環境や職場にやっと巡り会えたのだと思った。

 胡瓜の糠漬けをべた褒めする洋子に、池田は畑で取れた胡瓜と糠をお裾分けしてくれた。

『糠床作んなさいな!カッパちゃん。好きなだけ食べられますよ!』

 とからかわれ、社内に笑い声が響く。
池田のチャキチャキおっかさんという感じも嫌味がなくて良い。



 家に帰ると、糠床に手を突っ込んで掻き回し、大好きな胡瓜を取り出して、夕飯に添えた。


 田舎の胡瓜はみずみずしくて、パリパリの歯応えがあって、表面のイボイボが鋭いんだよ。
太陽の味がするんだ。
美味しいものを食べるには努力は惜しんだら駄目だよね。
美味いもの食べたら、笑顔になるんだもんね。


 別れてからも、伸介の言葉や想い出を胸に充実した日々を送っていた。

 ここに来てから笑いが増えていったんだよ。

 人の輪というものが、いかに大切かという事を学んできた甲斐もある。

[心は映し鏡]を肝に命じて、毎日を過ごしているよ。
 自分の心を映し出す鏡は、隅々まで容赦なく本当の姿を映し出している。
醜い行いをすれば、いずれ自分に跳ね返ってくる。

 毎日、清く正しく美しくなんて無理な話。

 それでも………
朗らかな気持ちを保てたら、世界は変わっていくんだね。

 『パリッ』とした歯応えで糠の染み込んだ胡瓜を齧り、プチハッピー気分になる洋子だった。
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