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禁断の果実に口づけを
第37章 生きていかなきゃ

 赴任して、もうすぐ一年を迎えようとしていた。
仕事やこの土地にもようやく慣れてきた。

 そんな中で知り合った青田卯月(あおたうづき)という建築士が居た。
四十歳の時に大手ハウスメーカーを辞めて独立し、この土地に個人事務所を構えて十二年が経つ。
元々は、長年洋子の勤める会社の生命保険に加入している顧客でもあった青田。
たまたま保険会社主催の経営者の賢い税金対策のセミナーを開いた時に洋子と知り合った。

 時折、青田の事務所に挨拶訪問に行く事になり、次第に洋子と青田は気さくな世間話などをする様になっていった。
もっぱら、青田の頭の体操と称するオセロゲームにコーヒーを飲みながら付き合わされたが。

 子供の頃からやっていたゲームでもあるし、割と頭脳ゲームには自信のあった洋子。

 『秋山さんが勝ったら、ご提案して下さった逓増(ていぞう)定期保険に入りましょう』
 
 最初に青田の事務所に訪れた時、そう言われて、喜んで相手を引き受けたが、未だに勝てずにいた。

 今日も応接セットのテーブルの上にオセロゲームの盤が置いてある。
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