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禁断の果実に口づけを
第37章 生きていかなきゃ
青田は話を続けた。
「大袈裟かもしれないけど、オセロは幸せの象徴なんですよ。
僕は幼い時からなるべく玩具を強請らない様に育てられた。
下に妹や弟も居たしね。
生活がいっぱいいっぱいなのも分かっていた。
でも、オセロが我が家にやって来てからは、盤を囲んで順番にゲームする様になったんです。
妹や弟にも僕がやり方を教えた。
普段仕事で忙しい親父も、正月休みに相手をしてくれた。
まぁ、青田家の一家団欒はオセロなわけです。
お金がなくてもね、温かい家庭がある事は、何よりも幸せに思えた。
だからかな……
僕は幸せを思い描く事を仕事にした。
幸せな場所を描く事をね」
「素敵ですね。
私は大学を出て、この仕事に就きました。
何がしたいとかじゃなく、漠然と選んでました。
夢を仕事にした青田さんが羨ましいです」
「そうでしたか。
なら、もうそろそろ秋山さんの勧めてくれた保険に入りましょうかね」
「えっ!!あっ、だって、私、今日も負けましたよ」
「秋山さんは素直過ぎるんですよね。
僕は、最初からあなたの勧めた保険に加入するつもりでしたよ。
ただ、あなたとゲームをしていたかった。
あなたに会える唯一のキッカケですからね」
「青田さん?」