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禁断の果実に口づけを
第38章 素
この土地で二度目の夏を迎え、祇園祭の時期を迎える。
青田から夜祭り見物に誘われた。
伸介からプレゼントして貰った浴衣を引っ張り出し、着付けて出掛けた。
未練なのか?自分を守るガードなのか?
複雑な気持ちが交差するが、この日の為に、一年前、伸介がプレゼントしてくれたのだ。
箪笥の肥やしにしてしまうのではなく、その想いに報いたい気持ちを優先させた。
が、しかし………
いざ着つけてみると、あの日が蘇ってしまう。
湧き上がる気持ちを押し切り、青田の隣りを歩いた。
カタカタと下駄の音が響く度に、少し切ない気持ちにもなる。
「洋子さん、浴衣似合ってますよ。
凄い人混みですね」
そう声を掛け、そっと洋子の手を握った。
「えっ!あっ……」
恥じらう洋子。
「はぐれないように、手繋ぎますよ」
青田も照れ隠しの様に言った。
ドキドキしてまともに顔が見れない洋子。
手を繋いだまま、暫く夜祭り見物をしていた。
そんな二人の前を天鈿女命 (あめのうずめのみこと)の人形を乗せた山車が通った。
ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!……………
威勢のいい掛け声にお囃子の音。
「洋子さんの浴衣……僕なのかな?」
「えっ!!」