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禁断の果実に口づけを
第39章 愛
「一本、煙草を吸わせて貰ってもいいかな?」
「あっ、どうぞ」
青田はポロシャツのポケットから煙草を出し、火をつけた。
煙をなるべく洋子に向けぬ様、窓を眺めながら吐き出した。
「ごめんね。
洋子さんは吸わない人だから、なるべく控えていても……癖になってしまっていて、落ち着きたい時には手を出してしまう。
辞められそうにないんだ」
「構いませんよ。
私は落ち着きたい時やストレスが溜まった時、甘い物を食べてしまいます。
太るのに辞めたくても辞められません」
「辞められないものを無理して辞めようとすると余計ストレスになるしね」
「はい。そうですね」
美味しそうに煙草を吸う青田。
「うん。煙草は辞められたらいいけど、こればかりは無理そう。
洋子さんが煙草を吸う人とはちょっと……と言われたら考えます」
そう言って笑った。
「………青田さん、あのぅ………私、バツ一なんです。
ですから一度失敗してるんですよ。
結婚はもう諦めてしまっているとこがありまして……」
「諦めなくても……まだまだ洋子さんは若い。
チャンスはいくらでもあったんじゃないかな?
聞いても差し支えないなら、理由(わけ)を教えて貰えるかな?」
「はい。話さなきゃいけない事ですから……」
そんな時、小倉のパンケーキをママが運んできた。
「おまちどうさま」
お皿に乗ったパンケーキはフカフカしていて粒餡がかかっていた。
その上に生クリームでデコレーションされている。
「ここのパンケーキの餡がね、とても美味いんだよ。
僕は甘党だから、無性に食べたくなる時あるんだよね」
「そうね、青田さん甘党紳士ですもんね。
ゆっくり涼んでいってくださいな」
ママはそう言って、洋子にもニッコリ笑い、カウンターの方に帰っていった。
「甘党紳士かぁ…
紳士って柄じゃないけどね!」
パンケーキを前にして照れながら苦笑する青田。
「紳士だと思いますよ」
「えっ、そう? またまた……じゃあ、まぁそういう事で」
互いに顔を見合わせ笑い合う。