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禁断の果実に口づけを
第41章 洋子
ズルズルとラーメンを啜る伸介。
最後の汁まで飲み干し、独り言の様に呟いた。
「美味かったよ。会いたくなる味なんだよな」
「有難うよ」
「今日来てみて良かったよ。
偶然にもあいつの話が聞けるなんてな」
「逃した魚は大きかったかい?」
「逃した魚は大きいか……。
なら、ちゃんと帰る場所に帰してやらないとね。
無責任な気持ちで引き留めて、時間もチャンスも奪うのは……
男として反則だろ?」
「違いねーな。兄さんの言う通りだ」
「素直過ぎる女は、男を見る目さえ養えば幸せになれんだよ。
きっと、あいつは……
幸せを引き寄せていく女だから大丈夫だ」
「じゃあ、兄さんも幸せにならないとな。
幸せを願って別れたなら、自分も幸せにならなきゃ相手に失礼だろ?」
「違いねーな!」
洋子の幸せを願う男達は、通り過ぎた想い出を笑顔で語り合う。
愛にはいろんな形がある。
身を引く愛も、また愛には違いない。
「ごちそうさん」
一杯のラーメンが想い出に変わる恋も必要だった。