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禁断の果実に口づけを
第41章 洋子

 夜が更けた頃、二人はご機嫌な酔いっぷりで帰って来た。

 翌日、父は仕事で出掛けたが、『卯月君、また気軽に遊びに来て下さい。海が近いんで釣りなんか今度どうかな?』とにこやかな笑顔を残した。
実家からの帰り道、卯月の運転する車の中で、昨日は父とどんな話をしたのかを聞いてみた。

 「僕も娘が居るからね。
洋子のお父さんの心配はよく分かる。 
幸せになって欲しいと思うから慎重にもなる。
大切なものを託すんだ。 
当たり前の事だよ。
ただね、亡くなった妻の満喜子(まきこ)が死ぬ前に言ったんだ。
『あなたのオセロに辛抱強くお相手してくれる人が居たら、私の事は気にしないでね。
あなたは一人じゃ生きてけない人。
私が先に逝く分、その方に託さないと』ってさ、笑って言ったんだよ。

 『馬鹿、お前が面倒みろ!』って強がったけど、僕は泣いていた。
満喜子はヤレヤレ顔をしながら、『そんなあなただからよ』って言うんだ。
病気で辛くて苦しい癖に、僕や娘の事を最期まで気に掛けた。

 娘の満月(みつき)が自立するまでは、そんな気持ちになれなかったよ。

  だけど、亡くなる前に言った満喜子の言葉……
きっと、先を見越していたんだね。

 だから、洋子に出会えた」

 「卯月さん……」



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