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禁断の果実に口づけを
第7章 理性と欲望の狭間

 「参ったよ、おやっさん!
パーフェクトヒューマンな!」

 伸介は笑いながら熱燗をお代わりした。

 「あいよ」

 と返事する笑顔のオヤジ。

 「のびちまうぞ、洋子!
なにボォーとしてんだよ!」

 ボォーとすんだろ?
あんたがにこやかな笑顔なんだから!!
喧嘩になるんじゃないかって心配したわ!
しかも、私はチャーシューじゃないし!!


 「お姉さん、この兄さんは口は悪いかもしれないけど、根っからのワルじゃないね」

 「えっ、あっ、ハイ」

 何なの?
このオヤジと伸介のやり取り……
そんな事を思いながらも、ラーメンをつゆも残さずに食べた。
身体は温まるし、こんなに美味しいラーメンは初めてだ。

 「美味しかったです」

 そう言うと、オヤジは喜んだ。

 伸介がラーメンをご馳走してくれて、車の置いてあるパーキングまで送ってくれた。


 「美味かっただろ?」

 「うん…」

 「あのおやっさんな、元ヤクザよ。
今はヤクザ辞めてラーメン屋のオヤジだけどな。
知っている奴は、あの親父に歯向かうもんはいねぇーよ。
それくらい、昔はかなり幅を利かせていた人だ。
人間も変わるもんだろ?」

 「えっ?!本当なの?」

 あのしょぼくれていても優しいオヤジが!?

 「人は見かけによらねーんだよ!
でも、日本一美味いラーメンを作るおやっさんだけどな!」

 伸介は笑った。
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