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禁断の果実に口づけを
第9章 デキる女ー倉橋朋子の秘密


 湯の溜まった浴室に入り、身体を洗う二人。
泡を身体に纒い、朋子を羽交い締めにして、豊かな胸の感触を味わう健。

 「あっ、うっ…うん…」
悩ましい声は浴室に響き渡る。

 泡を指で滑らせて、乳首を念入りに愛撫する。
愛撫に感じる朋子は後ろで支える健にもたれかかる。
昼間からの情事は二人の限られた時間だった。
この時間を得る為に、毎日必死で働く朋子にとっては、女に戻れる時間でもあった。

 二十九歳の時に、夫を事故で突然亡くし、幼い子供を養いながら生きていく道は限られていた。
働ける時間と子供を預けられる場所を確保出来る仕事も限られていた。
生きていく為に水商売を選んだが、幼い娘は夜に居ない母を恋しがり、笑顔がなくなっていった。
そんな時、同じ団地に住む北原晴美(きたはらはるみ)から保険外交の仕事に誘われた。

 『昼間預けられる保育園は一緒に探してあげるわ。
子供の行事や病気の時は遠慮なく休める。
そういうの優先してくれる職場よ。
水商売で寂しい思いをさせるよりずっといいわ。
あなた次第で女の出世だって叶えてくれる場所よ!』

 晴美は朋子に献身的になり、今の仕事に向かい入れてくれた。

 朋子が水商売を辞めて、保険外交の仕事を始めたのは、娘の笑顔を守る為だった。

 こうして健と不倫をしている自分も後ろめたいが、仕方がない事情と割り切った。

 自分次第で道を開くまでの後ろ盾は必要だったから。
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