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陽炎ーもうひとつの物語ー
第3章 三人
そんなある日。

「なぁ、市サン。」

鷺が話しかけてきた。

「八尋ってさ、どっか怪我とかしてる?」

「いや?してねぇと思うぞ?」

「そっか…じゃ見えないトコなのかな…」

とぽつりと呟いたのが気になった。

「何でそんなこと聞くんだよ?」

「んん〜、あいつさ、最近風呂はいってないみたいなんだよね。」

なんて言うもんだから、

「何でわかんだよ?」

と聞いてみた。

今のアジトは風呂がある。
毎日沸かすわけでもないが、湯を張った日は順番に入った。

「俺の部屋、一番風呂に近いからさ、わかるんだけど、アイツが入った後湯を流す音が聞こえないんだよね。汗のにおいはしないから、多分身体拭くくらいはしてるんだろうけど。で、怪我でもしてんのかな、と思っただけ。」

俺は嫌な予感がした。

「俺が風呂の音聞こえてるなんて言ったら角が立つからさ、市サンからそれとなく聞いてみちゃくれないかな?」

「あぁ、そうだな…」


その夜。

八尋が風呂から出てくるのを待って、俺は自分の部屋へ連れていった。

「頭領?」

ぐいと腕を引っ張ると、八尋は素直についてくる。

「お前、俺に隠してるこたねぇか?」

「何ですいきなり。そんなことありませんよ。」

俺は八尋の寝間着をぐいと脱がせた。

案の定。

上だけも肩、背中、二の腕に青々とした痣がある。
擦り傷の他に火傷の跡のようなのもあった。

俺ははぁっと溜息を吐く。
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