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陽炎ーもうひとつの物語ー
第2章 二人
二十歳の時だった。
金に汚ねぇ豪商の屋敷に忍び込み、いつものようにちょいと掠めて帰る途中。
俺は地下の小窓から抜けることにしていた。
その地下で、一人の餓鬼を拾った。
暦の上ではもう冬で。
昼間は暑い日もあったが、朝晩は寒気が地から這い登る。
ましてや地下なんて、足を踏み入れだけで震える程だった。
そんな中にあって。
そいつは素っ裸で、ぼんやりと座っていた。目の焦点もあってねぇ。
明らかに普通じゃなかった。
「お前、なんで裸なんだ?着るもんねぇのか?夜はひえるぜ?」
その餓鬼は、座敷牢みたいな檻の中に居た。
俺の声に反応し、
「え?あぁ、着るものか…あるよ…」
と呟き、行李の中から着物を引っ張り出す。
真っ赤な女物の襦袢。それと、着物も女物。刺繍や染めの感じからして、上物ではあるんだろうが、どれも薄汚れて、見窄らしかった。
何より、男なのにそんな着物しか与えられていない、そして座敷牢に囚われている。その事が、その餓鬼の身の上を如実に語っていた。
あの狸ジジィの慰みモンなんだろう。
変態が!
男が男を抱く。
それ自体は別にどうとも思わねぇ。
そんな奴は珍しくもねぇし、
人の性癖に口出す気もねぇ。
けど。
人を人とも思わずに慰みモンにするような輩には反吐が出る。
抱きたいなら抱きゃあいいが、それならそれでもっと扱いってもんがあるだろう?
弱者の気持が解らねぇ奴ってのは。
てめぇが一度もその立場に堕ちた事がねぇ、堕ち得る可能性すら考えた事もねぇ奴だ。
そしてそいつが高みの見物してられンのは。そいつの功績でもなんでもなく、ただ、強者の環境に生まれたってだけだ。ただ、運が良かっただけなんだ。
そんな事も解らず、人を踏み付ける奴を、俺は許せねぇ。
「お前、こっから出たいか?」
そう聞いてみた。
こいつがてめぇの意思でここに残りたいと思う、ジジィに抱かれる事に悦びを感じる、その可能性も捨て切れなかったからだ。
「俺には時間がねぇ。お前がこのままココに居たいってんなら、俺は行く。だが、出てぇってんなら今すぐ出してやる。どうするかはお前が決めろ。」
その餓鬼は暫く考え。
「出たい」
と呟いた。
俺は、ちと待ってろ、と声をかけ、懐から鍵破りの道具を出した。
金に汚ねぇ豪商の屋敷に忍び込み、いつものようにちょいと掠めて帰る途中。
俺は地下の小窓から抜けることにしていた。
その地下で、一人の餓鬼を拾った。
暦の上ではもう冬で。
昼間は暑い日もあったが、朝晩は寒気が地から這い登る。
ましてや地下なんて、足を踏み入れだけで震える程だった。
そんな中にあって。
そいつは素っ裸で、ぼんやりと座っていた。目の焦点もあってねぇ。
明らかに普通じゃなかった。
「お前、なんで裸なんだ?着るもんねぇのか?夜はひえるぜ?」
その餓鬼は、座敷牢みたいな檻の中に居た。
俺の声に反応し、
「え?あぁ、着るものか…あるよ…」
と呟き、行李の中から着物を引っ張り出す。
真っ赤な女物の襦袢。それと、着物も女物。刺繍や染めの感じからして、上物ではあるんだろうが、どれも薄汚れて、見窄らしかった。
何より、男なのにそんな着物しか与えられていない、そして座敷牢に囚われている。その事が、その餓鬼の身の上を如実に語っていた。
あの狸ジジィの慰みモンなんだろう。
変態が!
男が男を抱く。
それ自体は別にどうとも思わねぇ。
そんな奴は珍しくもねぇし、
人の性癖に口出す気もねぇ。
けど。
人を人とも思わずに慰みモンにするような輩には反吐が出る。
抱きたいなら抱きゃあいいが、それならそれでもっと扱いってもんがあるだろう?
弱者の気持が解らねぇ奴ってのは。
てめぇが一度もその立場に堕ちた事がねぇ、堕ち得る可能性すら考えた事もねぇ奴だ。
そしてそいつが高みの見物してられンのは。そいつの功績でもなんでもなく、ただ、強者の環境に生まれたってだけだ。ただ、運が良かっただけなんだ。
そんな事も解らず、人を踏み付ける奴を、俺は許せねぇ。
「お前、こっから出たいか?」
そう聞いてみた。
こいつがてめぇの意思でここに残りたいと思う、ジジィに抱かれる事に悦びを感じる、その可能性も捨て切れなかったからだ。
「俺には時間がねぇ。お前がこのままココに居たいってんなら、俺は行く。だが、出てぇってんなら今すぐ出してやる。どうするかはお前が決めろ。」
その餓鬼は暫く考え。
「出たい」
と呟いた。
俺は、ちと待ってろ、と声をかけ、懐から鍵破りの道具を出した。