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陽炎ーもうひとつの物語ー
第5章 赤猫
右半分が焼け、髪もちょっと焼けて頭に貼り付いている。
右目は瞼が焼けて一部ひっついているようで、半分程しか開いてなかった。

「怖く、ないのか…?」

女が震えるような声で聞いてきた。

「その顔がか?火傷が怖くて盗賊稼業が勤まるかよ。
それに….傷なら俺にもあらぁな」

俺は、顎をしゃくって顔の傷を見せた。

「俺は市九郎だ。お前は?」

女は、

「赤猫…」

と答えた。

赤猫といえば付け火の下手人だ。
てめぇで火付けて火傷する馬鹿はいねぇ。
だから、コイツは付け火なんかしてねぇ、ただ顔に火傷があるだけなんだと。
目立つ火傷が火事を思わせるから、赤猫と呼ばれ、人から忌み嫌われ、覆面で顔を隠して生きてるんだろう、と分かった。

哀れだ、とは思ったが、初対面で同情されんのも可哀想な話だ。
だから、笑い飛ばしてやった。

「赤猫か!こりゃとんだ大間抜けがいたもんだ!
お前、面白ぇなぁ。ハッハッハッハッ」


「お前、ヤサは何処だ。仲間は居んのか?」

赤猫はふるふると、頭をふる。

「一匹モンか。なら、ここにいりゃどうだ?」

赤猫の背に手を差し入れてゆっくりと抱き起こしながら。


「赤猫。 俺のオンナになれ。
ーーー俺が、お前を、護ってやる。」
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