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陽炎ーもうひとつの物語ー
第5章 赤猫
赤猫の身体は最高だった。

身体の相性がいいってだけじゃない。
俺の好きな、啜り泣くような喘ぎ声や、俺の動きに合わせて身体を動かしたり。
煽るのも上手い。
特に教えた訳でもねぇのに、俺が興奮したのをちゃんと分かって、俺の好みに寄せて来てるのが分かった。

最初、生娘だと知った時は面倒臭ぇと思ったが、慣れてしまえばどうってこともなく。寧ろ、自分好みに育ってくれた事に悦びしか感じなかった。

コトを終え、腕に抱いて眠る時。
肌に赤猫の寝息を感じる時。
いつも、鼻の奥がツンとするような、甘酸っぱいような、何とも言えない気持ちが込み上げる。

コイツは俺だけのモンだ。
誰にも抱かせねぇ。
誰にも渡さねぇ。

そう思うだけで、泣きたくなる程幸せな気分だった。

赤猫を囲って二月程で、赤猫は盗賊の仕事に加わりたいと言い出した。俺の仕事を見てみたい。
てめぇの身はてめぇで守ると抜かしやがる。
女一人守れいでか、と粋がってはみたものの、四六時中ひっついてるわけでもなし、またヤソジたちみてぇな馬鹿どもが来ないとも限らねぇ。赤猫への恋情なんてもんは無くたって、欲の捌け口、俺への意趣返しなんてのは、充分考えられることだった。
それを思えば、赤猫の案は悪くはなかった。
現場に連れていきゃ、今よりは目配りが出来る。
八尋の側につけりゃ身の危険も少ねぇだろう。
そうして、赤猫を手裏剣使いとして、八尋と共に援護につかせることにした。



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