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陽炎ーもうひとつの物語ー
第6章 決意
「いいから、教えてくれよ。」
桜は煙管を咥え、火入れにそっと近づけて火を点けた。
少し吸って火を落ち着けると、白いひと筋の煙とともにふわっと香りが広がった。
紅の付いた吸い口を俺に向け、目だけで吸うかと聞いてくる。俺は首を横に振った。
桜は軽く頷き、再び煙管を咥えると、一度深く吸い込んで、ふぅー、と細い煙を吐いた。
紫煙の燻る煙管を煙草盆に休ませ、
「月並なところでは朔日丸(ついたちがん)でありんしょうなぁ。」
と言った。
「なんだそりゃ。」
聞いたこともねぇ。
「毎月一日に飲めば子が出来ぬ、飲むのを止めれば子が出来ると言われている薬でありんすよ。」
「本当に効くのかそれ?」
そんな便利なモンあんのかよ…
「女郎の中にも、有難がって飲んでいる者は多くありんすよ。わっちは飲んではおりんせんが。」
「信じてねぇんじゃねぇか。」
俺は苦笑した。
「そんな夢のような薬が本当にあるのなら、店が皆んなに飲ませんしょう?なんと言うても、孕んで降ろせば、数日は客を取れんせんし、その分稼ぎが減るのでありんすから…」
「そりゃそうだな。」
「それでも。気休めでも、縋りたいてぇ女は多いんでありんす。」
哀れな話だ、とは思ったが、その朔日丸とやらは俺の求めるモンでは無さそうだ。
桜は煙管を咥え、火入れにそっと近づけて火を点けた。
少し吸って火を落ち着けると、白いひと筋の煙とともにふわっと香りが広がった。
紅の付いた吸い口を俺に向け、目だけで吸うかと聞いてくる。俺は首を横に振った。
桜は軽く頷き、再び煙管を咥えると、一度深く吸い込んで、ふぅー、と細い煙を吐いた。
紫煙の燻る煙管を煙草盆に休ませ、
「月並なところでは朔日丸(ついたちがん)でありんしょうなぁ。」
と言った。
「なんだそりゃ。」
聞いたこともねぇ。
「毎月一日に飲めば子が出来ぬ、飲むのを止めれば子が出来ると言われている薬でありんすよ。」
「本当に効くのかそれ?」
そんな便利なモンあんのかよ…
「女郎の中にも、有難がって飲んでいる者は多くありんすよ。わっちは飲んではおりんせんが。」
「信じてねぇんじゃねぇか。」
俺は苦笑した。
「そんな夢のような薬が本当にあるのなら、店が皆んなに飲ませんしょう?なんと言うても、孕んで降ろせば、数日は客を取れんせんし、その分稼ぎが減るのでありんすから…」
「そりゃそうだな。」
「それでも。気休めでも、縋りたいてぇ女は多いんでありんす。」
哀れな話だ、とは思ったが、その朔日丸とやらは俺の求めるモンでは無さそうだ。