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陽炎ーもうひとつの物語ー
第6章 決意
「高い台の上から何度も飛び降ろされたり、何やらという怪しげな薬を飲まされたりするそうでありんすよ?」

「そりゃどんな薬なんだ?」

「しかとは存じんせんが…何やらという金の種類だとか。それを飲めばたちまち子は流れるが、幾日も身体のだるさが残り、命を落とす者もおるとか…」

金…なんて溶けた状態じゃ熱くて飲めねぇだろうし、粉にして飲むんだろうか?
どっちにしたって命を落とす危険があるなんてのは駄目だ。

「なんかこう…もっと簡単で堅い方法ってなねぇもんなのかなぁ…」

ぽつりと本音が漏れた。

それに桜がクスリと笑う。

「女は抱きたい、さりとて子は要らぬ。それは…虫が良過ぎるというものでありんしょう?」

桜が流し目で俺を捕らえる。

「そのお相手が、何処のどなたか存じんせんが、少なくともわっちら女郎は、身体を張って、生命をかけてこの仕事をしておりんす。
仮に子降ろしにしくじって、生命を落とすとも、それを恨む者も哀しむ者もおりんせん。
だからこそ、高いおあしを頂くのでありんす。
殿方にとっては一夜の夢、快楽遊興に過ぎぬやもしれませんが、女にとってはこれは生命の遣り取りでありんすよ。」

そう言って桜は悠然と微笑んだ。

その笑顔には、玄人の矜持がはっきりと伺える。

俺は、桜の目を見ることができなかった。


つくづく考えが甘かったと、痛感した。
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