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陽炎ーもうひとつの物語ー
第6章 決意
俺は、その日も家には帰らず。
八尋の部屋で眠った。
八尋は屋敷に入り込んでるから、誰もいねぇのは知ってた。
勝手に入り、勝手に眠る。

赤猫の身は心配だったが、昨日の今日でどんな面下げて謝りゃいいかわからなかった。

こういうとこが駄目なんだろうなぁ、と思う。我ながら小せえなぁ。

うつらうつらと寝ては起きて悩み、考えあぐねてまた目を閉じる。
結局、朝になってもいつどうすべきか、何から手をつけるべきかなんか答えなんぞ出ず。

いつまでも寝床に居るわけにもいかず、外にでる。

昼過ぎのことだ。
俺はアジトの裏手にある小川の横でまだ悩んでいた。

不意に、杖が土を掻く音がして、俺は腕を組んだ。
鷺だ。
同じ杖を使うんでも、足が悪い兵衛と、目が見えねぇ鷺は杖の種類も使い方も違う。
兵衛は体を支える為の三本目の足みてぇなもんだ。
鷺は細い杖で、地面を掻くように探る。

鷺は俺の溜め息が聞こえた、と言い、俺の横に来た。
悩みがあるなら聞いてやるとしつこく食い下がる。
何も言わんでは引き下がらねぇだろうな。

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