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陽炎ーもうひとつの物語ー
第2章 二人
感情を表に出さないように仕込まれたのか。

それとも感情を殺さなければ生きられない程、過酷な環境を生き抜いてきたのか。

それを思っただけで辛くなる。

コイツを、心から笑わせてやりたい。
そう思った。

その為には、まずあの狸ジジィを始末しねぇとな。
俺の腹が収まらねぇ。

夜になり、八尋を寝かしつけ、俺は再びあの屋敷に向かった。
二回目に忍び込むのは、ばれてなきゃ簡単なんだけど。
八尋が逃げたせいか、昨日より人が多かった。
旗色が悪いか?と思いながら、覆面で顔を隠し、昨日の同じ経路で何とか忍び込む。
他の所に集まってるせいか、狸ジジィの寝間は手薄だった。

そぅっと部屋に入り、寝ているジジィの鳩尾に渾身の一発をお見舞いする。
ぅぐっ、という潰れたような呻き声とともに、ジジィが気を失った。

さて。
さっさと殺しちまえば済む話なんだけど。

この下衆野郎には八尋と同じ目に合わせてやろう。
そう思っていた。

その為には生きたままやらなきゃいけなかった。
見たくは無かったが下帯を解く。

肉に埋もれたそれを左手で掴み、纏めて小刀で一気に切り取った。
血が顔に飛ぶ。
痛みにジジィが起きたら困るので、もっかい鳩尾に一撃を喰らわせる。
拳でなく、身体の重みを乗せて肘を打ってやった。

メキっという音がしたから、たぶん肋骨は何本かいったんだろう。

ジジィは泡を吹いていた。

その後、左手に残ったジジィのブツの捨て場に困り、
我ながら悪趣味だとは思いながら、泡を吹いた口にねじ込んでやった。

まだ死んじゃいねぇだろうが、これ起きたら喉詰まるかもな。

散々八尋にヤらせてたんだろうが、最後はてめぇのモンしゃぶって死にやがれ。
唾を吐き捨て、返り血を布団でゴシゴシ拭き、
俺は屋敷から逃走した。


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