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陽炎ーもうひとつの物語ー
第2章 二人
小屋の近くまで一気に走り、血塗れとまでは行かないまでも、手と顔に返り血が飛んでいる事を思い出した。
布団で拭いただけだもんな。

一人ならこのまま寝て、朝んなってから湯でも沸かして拭くとこだけど、小屋には八尋が居る。
流石に血の匂いさせて帰るのは気が引けた。

他のアジトなら近くに温泉が湧いてるとこもあったのに、ここには外に小川があるだけで。
小屋の中にも布団も囲炉裏もない。
だが、考えたところで湯屋が空いてる時間でもないし、しょうがねぇ、血の飛んだ部分だけ川の水で洗うか。
と小川にいった。

あたりはまだ暗く、覆面を外して手と一緒に洗い、その布で顔を拭く。
着物にも飛んでるだろうがそれは明日洗濯すりゃいいだろう。
川の水は予想通り、刺さるような冷たさだった。ある程度洗い、手の感覚が無くなる。

さて、もういいか。

この幅なら飛んで渡れるだろう、と川を渡ろうとした時…
足場の土が崩れてそのまま川に滑り落ちた。

幅も四、五尺、深さも膝上くらいしかない小さな川だってのに。

冬の川の破壊力は抜群だった。

もがいても直ぐには立ち上がれず、バシャバシャとしばらく格闘する。

やっと岸に這い上がった時には、凍え死にそうになっていた。

ずぶ濡れのまま、何とか小屋まで帰り、戸を開けた。

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