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陽炎ーもうひとつの物語ー
第2章 二人
翌朝。
八尋のお陰でなんとか凍え死にを免れた俺は、昨日と同じ朝飯を用意した。
なんかもうちっとマシなもん食わしてやらなきゃな。
兎か鳥でも獲りに行くか。

「いやぁ、すまねぇなぁ、足滑らして川に落ちちまってよ、ったくザマァねえよなぁ。お前がいなきゃ凍え死ぬとこだったぜ」

俺は明け方の醜態を正直に白状した。
八尋は無表情で何も言わず。

納得したのかしてないのかもその表情からは読み取れなかった。

寒さの点では直ぐにでも他のアジトに移りたいとこではあったが、何処もあの屋敷のあたりを通らねぇと行けねぇし、もうちっとほとぼりが冷めるまで待つべきだろう。

風呂も布団もないのは辛かったが、昼の間に湯を沸かして身体を拭き、鍋だの汁だのできるだけ温かいもんを食って耐えた。

俺は八尋を置いてちょいちょい仕事に行ったりたまには湯屋にも行った。
八尋は、あの身体で湯屋に連れて行くのも憚られ、可哀想だが身体を拭くだけで我慢させた。

次のアジトは人気のねぇ温泉が近くにあるとこにしよう。そう思った。

八尋を拾って一月。
雪がちらつき始め、限界を感じて俺たちはアジトを移した。

八尋はとにかく目立つ顔をしてる。

一言で言ってしまえば女の様な顔立ちだ。
色が白く、眉も鼻筋も細く、目はくっきりと濡れた様な黒で睫毛が長い。
肩も腕も華奢で、指も細い。
本人が意識してのものかはわからないが、時折見せる仕草や表情の端々に、本物の女ならむしゃぶりつきたくなる位の色気もある。

一月の間、男に興味が無くてもコイツなら、という気はしなくもなかったが、そう感じた時は廓で欲を発散させた。

できるだけ、地味な女の格好をさせ、俺は、普段とは全く違う、総髪に結い上げ、女を連れて歩く与太郎(馬鹿・間抜け)を気取って町を通り抜けた。

町には商家の主人殺しの下手人として、覆面をした俺の人相書きが貼られていた。
噂も飛び交っていた。
俺はあの主人があの後死んだことを知ってはいたが。

その死に様が普通でなかったことは周囲の知るところでもあったらしい。
ま、なかなかねぇやな。
ザマァ見ろ。

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