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* 花音’s short story *
第5章 ◆ episode4 ** 瀬戸 美月 × 永瀬 陸 編
それは ──。


雑誌のクリスマス特集。


何気なく見ていたそのページに載っていた、水族館の近くにある観覧車。


『ピンクのゴンドラに乗り、てっぺんでキスをした恋人は永遠に幸せになれるというジンクスがある』



たまにしか想いを口にしてくれないし……(というか、私が催促して言わせてる)

友達の期間が長かったから……陸は以前とあんまり態度が変わらない。

2人っきりの時は、なんて言うか甘い雰囲気になることもあるんだけど……。

だけど、私たちが付き合ってることはあまり知られてなくて。

未だに、女の子から陸への橋渡しを頼まれたりする。


唯さんと圭吾さん。未緒さんと悠斗さん。美羽さんと結城さん。

私の周りにはそれぞれ素敵なカップルがいて……憧れてる。


── 変わるかな。もし観覧車でキス出来たら……私たちの距離はもっと近づいて、誰が見ても恋人同士に見えるようになるかな。



「おい、ぼーっとするな」

腕を掴まれる。


ハッと我に返ると、危うくコケそうになりながらエスカレーターを降りた。



……危なかった。

陸の手はすぐに離される。


「具合でも悪いのか?」

「悪くないよ。ちょっとぼーっとしてただけで……っ」

「あんまり世話焼かせんなよ」


相変わらず口は悪いけど、その言葉の裏に優しさが隠れてることを私は知っている。

ずっとそのことに気付かずに、喧嘩ばかりしてたけど、今は違う。


まぁもう少し優しい言葉を選んでくれたらいいのになって思うけど……。
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