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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「先生はそういうひとじゃないって思っていたし、実際その通りだった。昨日から一緒に過ごしてみて、改めてそれがよく分かった。…どうかなりそうになったとしても、最後の一線は絶対に越えなかった。私、大事にされてるって嬉しかった。大切にしてくれてるって…本当に本当に嬉しかったの」
ベッドサイドの灯りが、泉夏の微かな笑顔を照らした。
その微笑みに、秀王は即座に応じた。
「自分の不甲斐なさに、相当落ち込んでいるけれど。十も年上の割には頼りがいがなく、こんなにも情けない男だけど。けどこれだけは信じて欲しい。これだけは絶対だって胸を張って言える。俺は泉夏が一番大事で、一番大切だ」
「先生は不甲斐なくも、頼りなくも、情けなくもない」
-かっこ良くて、優しくて、頼もしくて、私が世界で一番大好きなひとだよ。
満面の笑みを向けられて。
直前まであんなにも自分を責め立てていたくせに、耳障りの良い彼女の言葉にすぐに喜んでしまう自分がいた。
美辞麗句を並べてくれてるとしても-それでも、嬉しかった。
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