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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「はしたないって…思う?」
泣き出しそうな泉夏の面持ちに、秀王は眉を寄せた。
「こんな事して…はしたないって思ってる?女のくせにって思ってる?呆れてる?嗤ってる?」
潤み始めた彼女の瞳に、秀王は打ち震える。
「ほんとなの。こんな事、今まで一度だって。誰に対しても思った事なんかない。今夜が初めて。先生だけ。何もないって分かってた。それでいいって思ってた。それで十分幸せだって本気で思ってた。…でももしも、そうじゃなくなったらって。『それだけじゃ足りない』って思ってしまったらって。その気持ちが自分だけなら我慢する。でも…もしも、先生もそう思ってくれたとしたら-」
-その時はって。
恥ずかしさに頬を火照らせながら、泉夏は懸命に言を紡ぐ。
「そう思ったら私-」
-手にしていたの。
最後まで喋るつもりだったのに、右のまなじりに触れた秀王の口唇に驚き、それは中断されてしまう。
泉夏の目尻に滲み出していた涙を彼の唇が拭い、舌先が掬う。
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