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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「…っ」
咄嗟の事にびっくりし。
加えてその刺激に、身体が小さく痙攣する。
『はしたない』かどうかをたった今、彼に確認している最中だと言うのに。
訊くまでもなく、自分は『いやらしい女』なのだろうか。
その事実に打ちひしがれ、左目から落ちた涙が頬を伝った。
涙を拭(ぬぐ)おうとした泉夏の右手は、秀王が掴まえた。
握られた手の中に、包みが触れた。
自分が彼に手渡した、四角い小さなそれ。
あまりの含羞に、泉夏は反射的に彼の手を振り解こうとした。
しかし、それを秀王は許さなかった。
力強く包み込むように握られ、更に指と指が一本ずつ絡まり-もう簡単に彼とは離れられなくなってしまってた。
嫌でも掌にその感触を常に感じ-泉夏は恥じらい続けるしかない。
意地悪しないで-懇願しようとして、その言葉はやっぱり言えない。
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