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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
心臓が跳ねた。
震える手を抑え。
彼にそっと、指先を伸ばす-。
「…っ」
悲鳴を、呑み込んだ。
ふたりの指と指が、確かに、微かに、触れ合った-。
受け取ったボトルを再び落としそうになり、急いで胸元に引き寄せる。
「あ…」
「…あ」
-ありがとう。
お礼を言おうとした泉夏と、秀王の声が重なった。
「えっ?」
泉夏は小首を傾げて、彼を見上げる。
秀王は泉夏の不安気な瞳に我に返る。
「…あ、いや。なんでもない」
足元の本を拾い、手で砂を落とす。