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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
-なんでもない、表情(かお)じゃない。
それなのになんでもない風を装われ、泉夏の心の中に言いようのない不安が広がってゆく。
強張る彼女の顔に気付いた秀王は、彼にしては少し慌て、否定した。
「あ、いや…そうじゃなくて」
「…」
「そうじゃなく-」
暫し秀王は言い淀んでいたが-最後は意を決したように、呟いた。
「桜の花びらかと」
「え?」
「桜の花びらみたいだなと…その、爪が」
「爪…?」
花びら?
爪が?
一瞬わけが分からず、泉夏はぽかんとした。
そしてようやく、彼が言わんとしている事に気付いた。
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