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第14章 朧夜の春

だめだと戒めていたものが、だめじゃないのだと分かった途端。
嗤ってしまうくらい、即座に身も心も応じた。
ずっと欲しかったものがすぐ近くに。
ずっと我慢してきたけれど、もうそんな必要はなかった。

『欲しいものがすぐ側にあるのに、指を咥えたままだなんて？』

不意に、彼の台詞が甦る。
何故こんな時に。
余計な事を考えてる暇など微塵もないくせに。
その余裕は一体どこから？－だが、こんな時だからこそだった。
そのつもりだったけど、本当にいい？
本当に自分のものにしてもいい？
彼のものになるはずだった。
最後の最後で襲う罪悪感。