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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
ふたりとって初めての夜だった。
だから尚更、許可を得てからにしようと思っていた。
でも『全部いいに決まってる』から、そもそも訊く必要などないのだと言われ、もうなんの躊躇いも必要なかった。
確認する僅かの時間さえ酷くもどかしいくらいに、気が急いていた。
秀王がシャツに手を伸ばせば、泉夏はほんの少し身体を背後に引いた。
迷いは捨てたはずなのにそんな素振りをされれば、やはり一時中断せざるを得ない。
「…大丈夫?」
『訊かなくていい』と言われた側から、結局は問いかけてしまう。
『だめ』なんて言わないと宣言した通り-泉夏は俯き加減で頷いた。
彼女の言葉を疑っていたわけではないが、肯定されて秀王は安心する。
ここで『だめ』だと言われても、自分を抑える自信などとっくになかった。
改めて白いシャツの裾に両手をかければ、今度は拒絶しているかのような態度はとられなかった。
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