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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
視線をシーツの上に泳がせる。
脱がされたシャツとブラジャーのすぐ側に、黒っぽい何かが置かれていた。
恐らく、自分の求めに応じて彼が脱いでくれたカットソーらしかった。
触れ合う肌と肌が熱い。
爽やかで涼しげな彼の匂いがいつもよりはっきりと、鼻腔に運ばれてくる。
隔てる洋服一枚すらない。
体温も。
匂いも。
よりはっきり。
より濃く。
彼を感じて当然だった。
「寒くない…?」
問いかける彼の声は、硬さが含まれているようだった。
抱き締めてくれる腕も、心なしか遠慮がちだった。
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