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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
「夏休みは?」
泉夏は急いで顔を上げた。
「楽しかった?」
数歩先を行きつつ、准教授は半身を振り返った。
「あ…はい!」
歩む彼に、思わず泉夏はつき従っていた。
彼女の答えに満足そうに微笑んだ秀王は、進行方向に身体の向きを戻す。
「先生は…ずっとお仕事?」
応えてくれないかもしれない-それでも、良かった。
「そう言っただろ」
立ち止まりも。
振り返りも。
どちらもしてくれなかった。
だけど、返事をしてくれた-それも想像以上に優しい、声音で。
「はい-」
目頭が熱くなる。
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