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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
「全然謝る事じゃない」
秀王が抱きかかえるようにして頭を撫でてやれば、泉夏は重い口を開く。
「…初めての相手の方がいいとか思ってる?」
流石に呆れられてしまったのだろうか。
女の自分から手渡したり、服を脱ぐ事を強要したり。
だからこんな事を訊かれてくるのだろうか-泣きたいのと恥ずかしさが、入り混じる。
だかしかし、泉夏が心配していた答えを彼は発しなかった。
「他がどうかは知らないけど。俺はそういうのは気にしない。どっちでもいい。俺にとって一番大事なのは、相手が泉夏かどうかって事だけだ」
「…」
「大切な泉夏に嫌な思いや痛い思いは、可能なら与えたくないって思ってた。どちらでもいいのは本当だけど…でも、そういう意味では良かったって安心してる」
撫でられた延長で髪を梳かれ、泉夏は消え入りそうな声音で呟く。
「でもそれは、もう前の事。この三年間よりも前の話。だってこの三年間は、ずっと先生だけを想ってきた」
-それは信じて。
自分に縋る細い両腕に、秀王は熱い想いが込み上げる。
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