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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
「泉夏が初めてでは…ない」
-それはごめん。
言い淀みながらもありのままを伝えてくる彼に、泉夏は再度強く頭を動かした。
「…それは、いいの。そんなの最初から思ってないから。もしも、初めてだとか言われたら…逆に色んな意味で困るし」
泉夏が頬に紅を乗せれば、秀王は微かに笑った。
「けど、泉夏と出逢ってから三年間、好きなひともいなければ、特定の誰かと付き合っていたとか…そういうものも一切なかった。それは信じて欲しい」
「…う、うそ」
刹那、心が躍ったが。
すぐにそれは彼の優しさ故の気休めだと理解し、泉夏は可愛さの欠片も口調で言い放つ。
「いたに決まってる。…でも、いいの。おかしな事訊いた後で、何言っても説得力ないだろうけど、いて当然だと思うから。だって先生かっこいいもん。周りの女のひとが放って置かない。…だから、いいの。いていいの。私を傷付けまいとして、無理矢理嘘を言わなくても大丈夫」
-過去の事だから。
物分りの良い、おとなの回答をしたつもりだった。
なのに。
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