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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
手を繋いだ事もなかった。
抱き締められた事も。
キスだなんて夢のまた夢。
一縷の望みさえなかったはずなのに。
なのにどうして今、こうしているの?
指を絡めて手を繋ぎ。
情熱的な口付けを交わし。
温かな腕に抱き締めてもらって。
そしてとうとう、大好きな大好きなあなたと結ばれた。
望むだけでおこがましかった。
願うだけ無駄だった。
なのにどういう運命の悪戯なのだろう。
全て叶ってしまった。
これが嬉しくなくて、なんだと言う?
これ以上の嬉しさって、ある?
私は知らない-。
「嬉しくて泣きそうなのは、俺も同じだ」
不意に彼の声がして、泉夏は恐る恐る顔から手を外した。
目が合えば-微笑まれる。
泉夏のまなじりに滲む涙を、秀王は指で押さえた。
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